「授乳・離乳の支援ガイド」が12年ぶりに改定になったという話
ママってさ、管理栄養士なんだよね?
そうだよ~。
どんなお仕事なの
え~。いろいろ。
ドラマの「シェフ」でえんけんさんがやってたみたいなやつ?
あ~それも栄養士のお仕事だけどね。ママは献立は立ててないからな。
じゃ、ママのお仕事は何?
ママは、栄養指導とか栄養相談のお仕事が多いよ
ふ~ん
そんなわけで、管理栄養士らしい内容のものを少し!
私は、数年前まで保健所の管理栄養士をしていましたが、1号が小学校に入学するタイミングで退職し、今はフリー(というと聞こえはいいけど、パート的な、非常勤の仕事をいくつかやっております)の管理栄養士です。
赤ちゃんの離乳食に関する栄養相談の仕事もしているので、母乳やミルク、離乳食に関する情報をご紹介。
「授乳・離乳の支援ガイド」って何?
厚生労働省が策定した、栄養面での子育て支援を推進するための手引きです。
自治体が行う乳幼児の支援には、赤ちゃん訪問、乳幼児健診、離乳食講習会などがあり、医師、保健師、助産師、管理栄養士などの専門家に相談することにもなりますが、その際に一貫した支援ができるように、授乳や離乳に関する基本的な考え方を定めたものです。
今回のガイドの基本的な考え方
◎親子の個別性を尊重する
◎インターネットなどのさまざまな情報がある中で、慣れない授乳・離乳において生じるトラブルに対し、母親などの気持ちや感情を受け止め、寄り添うことを重視
◎妊産婦や子どもにかかわる多くの専門家たちが授乳・離乳に関する基本的事項を共有
◎妊娠中から離乳の完了にいたるまで、支援内容が機関によって異なることがないよう、一貫した支援を推進
授乳について
「母乳や育児用ミルクといった乳汁の種類にかかわらず、母子の健康維持とともに、健やかな母子・親子関係の形成を促し、育児に自信をもたせることを基本とする」とあり、母乳にこだわりすぎず、必要に応じて育児用ミルクを上手に取り入れる。
主な改定のポイント
◎母親が安心して、自信を持って授乳できるよう、きめこまかな支援を行う。
◎完全母乳と混合栄養の間に肥満発症に差があるとする科学的根拠はないため、育児用ミルクを少しでも与えると肥満になるといった表現で誤解を与えないようにする。
◎母乳(6か月間)によるアレルギー疾患の予防効果はないが、消化器感染症の減少などの利点がある。
◎乳児用液体ミルクの国内での製造・販売が可能になり、災害時の備えとしての活用が期待されている。使用する際は商品表示を必ず確認する。
栄養相談の仕事をしていると、母乳なのか、ミルクなのかを聞くことがあるが、完全母乳、完全ミルク、混合といろいろ。
その中でも最も多いのは混合かなぁと、今までの関わりの中では思うところ。
母乳のいいところもあるし、ミルクのいいところもあるし、どちらがよいと思うものでもない。
中には、ミルクを与えることに罪悪感を感じていたり、完全母乳への思いが強く、ミルクを与えることがよくないと思っているママもいたり。
そんな時の少しでも気持ちが軽くなるような支援をしたいというか。
どのメーカーも母乳に近づけるような研究を重ねているし、育児用ミルクには規格基準があって、特別用途食品のマークがつけられているから、安心していいと思うんだよな。
母乳のメリット
◎赤ちゃんの成長に必要な成分がすべて含まれている
◎病原菌から赤ちゃんを守る抗体も含まれている
◎産後の母体の回復を早める
ミルクのメリット
◎母乳が出ない、少ないママの精神的な負担を軽減
◎母乳との併用で、状況に応じた授乳ができる
◎パパも授乳できる
◎赤ちゃんが飲んだ分量がわかる
母乳がでるのであれば、それをわざわざミルクに切り替える必要はないと思う。
ただ、母乳育児の場合、母乳中に含まれる鉄含有量が少ないそうなので、鉄の不足に気を付ける必要がある。
授乳・離乳の支援ガイドには「生後6か月時点でヘモグロビン濃度が低く、鉄欠乏を生じやすいとの報告がある」との記載もあるので、育児用ミルクも上手に活用すればいいと思う。
ちなみに、1号の時は混合だった。からだが小さくて、母乳だとどのくらい飲んでいるかわからないので、母乳を飲ませた後にミルクもガンガン足していたんだけど、成長はそれなり。成長曲線の下の線のさらに下を曲線に沿って増えていった。どんなにミルクを増やしても、飲んではくれるが体重はなかなか増えなかった。ミルクも飲んでくれたおかげで、用事があるときにばあちゃんに預けることができたのだった。
その反面、2号の時は完全母乳。完全母乳にしたかったわけではなく、ミルクも飲ませたくて練習もしていたが、あの人がミルクを受け付けなかった。だから、なかなか預けることができなくて、本当に大変だった。
母乳もミルクも飲めた方が楽だよ。➡️私の個人的な意見
液体ミルクとは
◎乳児用液体ミルクは、液状の人口乳を容器に密封したものであり、常温での保存が可能なもの
◎調乳の手間がなく、消毒した哺乳瓶に移し替えて、すぐに飲むことができる
◎地震等の災害によりライフラインが断絶した場合でも、水、燃料等を使わず授乳することができる
今年は、液体ミルクも発売になりましたね。
最初はアイクレオ、続いて明治と。
割高だけど、便利だなぁと思ったりします。
災害時(地震とか台風とか)に水道や電気がストップしたときに活躍する気がします。
離乳について
卵アレルギーに関する最新の科学的知見が盛り込まれ、卵(卵黄)を食べさせる時期が5~6か月頃と、従来の7~8か月頃から前倒しになりました。
主な改定のポイント
◎卵黄は離乳初期(5~6か月頃)につぶしがゆ、すりつぶした野菜などを試し、慣れてきたらつぶした豆腐、白身魚などと同時期に与え始める。
◎母乳育児の場合、鉄欠乏やビタミンD欠乏予防の観点から、適切な時期に離乳を開始し、鉄やビタミンDを含む食品を積極的にとらせる。
◎離乳食作りの負担軽減のために、ベビーフードを上手に利用するのも方法のひとつ。離乳食づくりの際の参考にもなる。
◎離乳食の進め方の目安の表記を次のようにする。
・離乳初期(5~6か月ごろ)
・離乳中期(7~8か月ごろ)
・離乳後期(9~11か月ごろ)
・離乳完了期(12~18か月ごろ)
アレルギーについて
アレルギーが心配で、たんぱく質系のものをなるべく遅く与えようとする人も多く見かけます。
もちろん急いで与える必要はないのですが、必要な時期に必要なものを与えることが大切なんですよね。
食物アレルギーは、主に食物に含まれるたんぱく質がアレルゲンとなって、ショック症状などが引き起こされるというもの。
以前は、原因となりやすい食物を避けたり、与えるのを遅らせたりすることが主流だったので、卵とか牛乳とか、なるべく遅く与えることは普通だったかもしれません。
最近は、赤ちゃんの頃から食べさせた方がアレルギーの発症を抑えられたという研究結果が報告されているそうです。
昨年だったかな、アレルギーの研修で、アレルギー専門医の話を聞きましたが「アレルギーの予防のために食べる時期を遅らせるのはまったく意味がない」とのことでした。
アレルギーは、症状が出てみないとなんとも言えないそうです。
もし症状が出たら医療機関に行く。
症状がでない状態での予防はできないそうです。
むしろ、必要な時期に栄養を与える機会を逃してしまうことの方が問題とのことでした。
だから、アレルギーを必要以上に心配せずに、必要な時期にたんぱく質を与えるようにして欲しいと思います。
最近の研究では、4~5か月までにアトピー性皮膚炎を発症した赤ちゃんを対象に、6か月から卵を与えるグループと全く与えないグループに分け、1才の時点での卵アレルギー発症率を調べたところ、6か月から卵を与えたグループの方が8割程度、発症を抑えられたとの結果があるそうです。
そこには皮膚が関係しているとのこと。健康な皮膚であれば、赤ちゃんの周りにアレルゲンがあっても皮膚のバリア機能により侵入できません。しかし、皮膚に湿疹があって炎症を起こしているとバリア機能が低下し、皮膚からアレルゲンが侵入します。➡️体内で異物と認識する(感作)。➡️離乳食で卵を食べたときに異物が入ってきたと体が判断し、卵アレルギーを発症する。皮膚に炎症がある場合、卵の与える時期を遅らせれば遅らせるほど卵のアレルゲンの感作が進み、卵アレルギー発症のリスクが高くなるとのこと。
アレルギーのリスクをできるだけ避けるには、生まれてすぐからスキンケアをして皮膚を健康な状態に保つことが大切のようです。
既に、食物アレルギーと診断されている、アトピー性皮膚炎と診断されている、皮膚にかゆみのある湿疹や乾燥がある、親がアレルギー体質であるなどの場合には、食物アレルギー発症のリスクが高いので、離乳食開始前にアレルギー専門医に相談することが必要であるようです。
ベビーフードについて
離乳食は手作りできるのであれば、手作りが望ましいとされるが、ベビーフードを上手に使用することで保護者の負担が軽減したり、離乳食の内容の幅が広がったりもする。
ちなみに、私もベビーフードを使っていました。手作りもしていましたが、どちらかというとまとめて作って冷凍。おでかけの時は、ベビーフードが便利。1食分の主食とおかずのセットでスプーンがついているやつが便利でした。わざわざスプーン&フォークセットを持ち歩かなくても済むわけですよ。
私がよく使っていたのは、北海道物産展でよく売っている野菜のフリーズドライの粉末。マッシュポテトとか作れるやつ。じゃがいも、とうもろこし、かぼちゃ、にんじん。これらは、野菜の素材そのもので、赤ちゃんにも大人にも活用できるのが素晴らしかった。かなり助けられました。
1回分の個包装になっているフルーツソースもお気に入りでした。ヨーグルトに入れたり、パンに塗ったりして食べさせていたな。
ベビーフードの種類も以前よりも充実してますねー。赤ちゃん用のうどんがあったり。
ベビーフードを利用する時の留意点
◎子どもの月齢や固さのあったものを選び、与える前には一口食べて確認する
子どもに与える前に一口食べてみて、味や固さを確認する。温めて与える場合には熱すぎないように温度を確かめる。子どもの食べ方を見て、固さ等が適切かを確認。
◎離乳食を手づくりする際の参考にする
ベビーフードの食材の大きさ、固さ、とろみ、味付け等が離乳食を手づくりする時の参考にする。
◎用途にあわせて上手に選択する
そのまま主食やおかずとしてあたえられるもの、調理しにくい素材を下ごしらえしたもの、家庭で準備した食材を味付けするための調味ソースなど、用途にあわせて種類も多様。外出や旅行のとき、時間のないとき、メニューを一品増やす、メニューに変化をつけるときなど、用途に応じて選択する。不足しがちな鉄分の補給源として、レバーなどを取り入れた製品の利用も可能。
◎料理や原材料が偏らないようにする
離乳が進み、2回食になったら、ごはんやめん類などの「主食」、野菜を浸かった「副菜」と果物、たんぱく質性食品の入った「主菜」がそろう食事内容にする。ベビーフードを利用するにあたっては、品名や原材料を確認して、主食を主とした製品を使う場合には野菜やたんぱく質性食品の入ったおかずや果物を添えるなどの工夫をする。
◎開封後の保存には注意して、食べ残しや作りおきは与えない
乾燥品は開封後の吸湿性が高いため使いきりタイプの小袋になっているものが多い。瓶詰めやレトルト製品は、開封後はすぐに与える。与える前に別の器に移して冷凍又は冷蔵で保存することもできる。食品表示をよく読んで適切な使用を。衛生面ね観点から、食べ残しや作りおきは与えない。
参考
改定の主なポイント(厚生労働省の資料より)
(1)授乳・離乳を取り巻く最新の科学的知見等を踏まえた適切な支援の充実
食物アレルギーの予防や母乳の利点等の乳幼児の栄養管理等に関する最新の知見を踏まえた支援のあり方や、新たに流通する乳幼児用液体ミルクに関する情報の記載
(2)授乳開始から授乳リズムの確立時期の支援内容の充実
母親の不安に寄り添いつつ、母子の個別性に応じた支援により、授乳リズムを確立できるよう、子育て世代包括支援センター等を活用した継続的な支援や情報提供の記載
(3)食物アレルギー予防に関する支援の充実
従来のガイドでは参考として記載していたものを、近年の食物アレルギー児の増加や科学的知見等を踏まえ、アレルゲンとなりうる食品の適切な摂取時期の提示や、医師の診断に基づいた授乳及び離乳の支援について新たな項目として記載
(4)妊娠期からの授乳・離乳等に関する情報提供の在り方
妊婦健康診査や両親学級、3~4か月健康診査等の母子保健事業等を活用し、授乳方法や離乳開始時期等、妊娠から離乳完了までの各時期に必要な情報を記載